床下環境講座

床下環境講座

従来の日本の家は、高温多湿な気候に配慮して、自然の風が通り木材を長持ちさせる構造でした。しかし、現代の建築は高気密な構造が多く、通気性が悪く湿度を高めるため冬は結露の原因となり、放置するとカビやダニなどの発生につながります。また、室内空間に花粉アレルギーや「ホルムアルデヒド」に代表される揮発性有機化合物の揮発を抑える資材を使用し、換気機器などで軽減しています。

快適な人と住まいの空気環境

人は、食べ物や飲み物の数倍、空気中の大量の物質を呼吸によって摂取しています。
摂取する量は、食べ物約7%、飲料水約8%、空気が約83%です。室内ではおよそ57%の空気を摂取するため、汚染された空気を清浄機などでコントロールします。

建物(床下)の通気性と湿度

建物の床下にある換気口は、自然の風を通しても風量が少なく、通気性が悪いため土壌からの蒸発などで湿度60%以上、温度20~30度になります。その環境はダニやシロアリが発生しやすく、構造材(柱・土台・大引・束柱)にカビが増殖する原因にもなります。

建物(床下)の結露

建物の床下と屋外の温度差によって、床下で空気中の水蒸気が結露します。構造材の含水率が20%以上になると、腐朽菌の繁殖がシロアリをはじめとした害虫発生の原因となります。布基礎に囲まれた隅は、特に通気性が悪く結露しやすい環境です。

ダニアレルゲンと気管支喘息等の原因

室内(床下)の結露によって発生するカビ等を捕食するダニ(ヒョウヒダニ類等)や、浮遊するカビの胞子・ホコリ等を吸引し続けると、アレルギー反応を引き起し「ダニアレルゲン」や「気管支喘息」等の様々な原因となります。

室内の空気環境にあるアレルゲン

カビアレルギー
気管支炎・アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎・過敏症肺炎・ハウスダスト等
ダニアレルギー
気管支炎・アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎・アレルギー性結膜炎・ハウスダスト等

ダニの生息する環境

温度
20℃~30℃(高温の時期)
湿度
60%~80%(多湿の時期)
栄養
人(フケ・アカ・髪の毛)・食べこぼし等
主な場所
布団・カーペット・布製ソファー等

カビの繁殖する環境

温度
0℃未満~40℃(最適20℃~30℃)
湿度
60~80%以上(活発に繁殖)
栄養
食べこぼし・人(アカ・髪の毛)・
ホコリ等の有機物
湿度
通気性が悪く多湿

木材腐朽菌は構造材の強度を低下

木材の主成分であるセルロース・ヘミセルロース・リグリンを栄養源とする腐朽菌が繁殖すると、構造材の強度が低下します。木材腐朽菌の担子菌に分類される菌類には、「白色」「褐色」と、子のう菌や不完全菌に属する「軟」腐朽菌の3種類があります。

白色腐朽菌

白色腐朽菌

広葉樹(ケヤキ・クスノキ・ブナ等)の腐朽に多く、白色となって亀裂を生じるほか、繊維状にほつれを生じます。

褐色腐朽菌

褐色腐朽菌

針葉樹(スギ・ヒノキ・ヒバ・米ツガ等)の腐朽に多く、褐色に変色し、紛状になります。

軟腐朽菌

軟腐朽菌

白色腐朽菌と褐色腐朽菌は高含水率になると分解できず、木材の表面は柔らかくスポンジのようになります。

木材腐朽菌が発生する条件は、水分・湿度・空気・栄養をすべて満たす環境 木材腐朽菌が発生する条件は、水分・湿度・空気・栄養をすべて満たす環境

水分
大気中の湿度85%以上・木材の含水率20%以上
湿度
0℃~50℃・15℃~35℃(繁殖)
空気
酸素の供給
栄養
木材の主成分セルロース・ヘミセルロース・リグニン

腐朽菌の生育と種類

腐朽菌の生育と種類
24℃以下 24~32℃ 32℃以上
好低温菌 好中温菌 好高温菌
イドダケ・ナミダダケ・ホシタケ イチョウタケ・オオウズラタケ・カタウロコタケ・カイガラタケ・スエヒロタケ・マツオウ・等々 アカゲカワラタケ・キカイガラタケ・ヒイロタケ
須貝 高 氏

アドバイザー:須貝 高 氏

工学博士。福岡大学建築学科教授。九州住まいづくり研究会主宰健康住まいづくり研究会主宰。各地で腐朽・啓蒙活動を行っている健康住宅研究の第一人者。

現代住宅は気密性・断熱性に優れています。が、床下をみると湿気が多く建築材の強度が弱まっていることが多いのです。
住宅を支えるのは床下の基礎ですが、それが腐っているケースもありますので十分注意が必要です。
あわせて床下の湿気が原因でダニやカビが発生することが多く、抵抗力のない赤ちゃんやお年寄りには大きな負担になります。
また、湿気を含んだ木材というのは耐震性が弱まり地震などのショックで大きく変形します。
阪神大震災の現地調査でも水回りの部分の湿気が原因で木材が腐朽していたり、シロアリの食害によって崩れているケースが非常に多くありました。
建物は乾燥した木材を使うことで強度が高まります。
これらの事例を考えても床下に新鮮な空気を取り入れ、湿気を取り除くことが大切であることが分かります。

世界の国々の中でもこれだけ雨が降って湿気多いのは日本に見られる特徴です。また地震についても日本ほど多い国はありません。ですから昔の日本人は高温多湿の気候に対していろんな工夫をしてきたのです。
着物も体全体に空気が通るように考えられていますし、建築では神社仏閣を見ればわかるように、高床式で建物全体に風が通るつくりになっていますね。これらの工夫が寿命の長い建物になっている要因なのです。

建物を支える床下の風通しを良好にさせることは高温多湿な日本の家屋にとって必須条件であり、いま建築に求められている耐震対策にもつながる大切なことなのです。